No.105: 『我が愛しの神々よ(その3)』
はいどーも。紫乃女です。
ご機嫌いかがですか?
薔薇のシッポさんとこの会員サロン(?)Elpisにて
9 月の紫乃女特別賞を受賞なさった方から、
「アステカの神々について」・「宇宙について」・「幽体離脱について」
の3 つのお題のうち、一つを選んでコラムを書いて欲しいという
ご要望を頂いたんですが、どれを選ぶべきか正直迷いました。
一番最初に「このお題は止めとこう」と思ったのは「宇宙について」です。
なんたって解明していない謎が多すぎる。
宇宙の始まりすら、仮説は山のようにあれど、
どれが正しいかはいまだ分かっていないでしょう?
専門家の方々が頭を絞って考えても謎が
広がるばかりの宇宙に関して、一介の呪詛屋が
言えることなどたかが知れているではありませんか。
なのでこのお題は却下となりました。
次に、「幽体離脱(体外離脱)に関して」ですが、
正直に申し上げますと、あたしは反対派です。
こんなものは意識的にやろうと試みるもんじゃないと
内心思ってます。何度も何度も試みるうちに、
思わぬ弊害が脳に発生し、そしてそれは一生あなたを
苦しめることに繋がるだろうと、『内心』思ってはおりますが、
その一方で「新しい能力に目覚めよう!」とか言って
「幽体離脱」を推奨する方々が一定数
いらっしゃるのもまた事実です。
紫乃女は基本的に、売られた喧嘩は借金してでも
買いますが、自分から売って歩く趣味は無いんです。
弱い犬じゃあるまいし、自分からワンワン吠えまくるのは恥ずかしいでしょう?
そんなわけで、一定数いらっしゃる「幽体離脱
推進派」の方々に喧嘩を売らないためにも、
このお題はパスしたいなと思います。
(でも止めておいた方がいいと思いますよ?
証拠も無いのに紫乃女がそんなこと言うわけないでしょう?)
となると、残りは一つですので、必然的に今回の
コラムのお題は、「アステカの神々について」
ということになりますね!ヾ(´▽`)ノ
アステカの世界は、オメテオトル(Ometeotl)という神によって創造されました。
オメテオトルは二面性の神様で、「男性と女性」「光と闇」「秩序と混沌」
のように、対立する2つの性質を兼ね備えた神様だったのです。
ま、男性性も女性性も兼ね備えていらっしゃるので
お一人で子孫作成が可能だったものですから、
有名どころのケツァルコアトルやテスカトリポカ
などを始めとするアステカの神々をお一人で
ばんばん生み出した後、とっとと楽隠居を決め込んでしまわれました。
なので、この世界の創造を実際に担当したのは、
生み出された側の神々だということになります。
ただ、天地は創造出来たものの、太陽に関しては
神々でさえも何かを犠牲にしなければ生み出すことが
出来ませんでした。アステカ神話では、現在に至る
まで、世界の創造と終末が何度か繰り返されてきたのですが、
現在の私たちのこの世界は「第五の世界」に該当します。
つまり今までに「第一の世界」から「第四の世界」が生まれそして滅びた
ということになります。
世界が創造されるたびに、神のうちの1 柱が犠牲に
なって太陽を作ってきました。
そして第五のこの世界を創造する際に、神々はテオティワカン
(現在のメキシコの首都メキシコシティの北50 キロ近辺の場所)
というところに集まって、今回は神々のうちの誰を犠牲にして
新しい太陽を創造しようかと話し合いました。
でも、誰だって自分が犠牲になりたくはないもの。
最終的には2 柱の神々が選出されましたが、
自ら火の中に飛び込み我が身を犠牲にして太陽を
生み出したのは1 柱でした。残りの1柱はちょっと
ためらってから飛び込んじゃったので、
太陽が2つ生み出されることになってしまいました。
太陽2 個分の眩しさと暑さにびっくりした残りの
神々は、後から飛び込んだほうの神の顔に
ウサギを叩き付けてしまい、いきなり顔面に
ウサギが張り付いた側の神もびっくりして、
太陽ではなく、月になっちゃったそうです。
月にウサギだなんて、ちょっと日本と似てますよね!
ただ、ここで注意しなければいけないのは、
「太陽は神を犠牲にして生み出され続けてきた」
ということです。世界を維持するために神ですら
生け贄を捧げてきたのです。だからこそ
その神に従う人間達も同様に神に生け贄を捧げる必要があったのです。
この世界の維持のために、そして新しい世界を更新するために、
アステカの民は神々に生け贄を捧げる必要があったのです。
ですから「捕虜の心臓を神に捧げるなんて野蛮な民族だわ!」
と思考停止する前に、「なぜアステカの民はそんなことを
しなければならなかったのか」を神話面から再度見直してみるのは
異文化の理解において大切なことだと思いますね。
だって最終的にその「野蛮な民族」を武力と疫病で
滅ぼしたのが、YHVH を絶対神として掲げる自称「文明人」達なんですから。
どっちが野蛮か分かったもんじゃないでしょ?
ま、アステカの神話体系はこれくらいにして、
そろそろ神々の話に移りましょう。
とはいっても、結構な数いらっしゃいますからねぇ。
誰にしようかなぁ、んー。
個人的に好きなのは、テスカトリポカとウィツィロポチトリです。
そうそう、テスカトリポカは、
「テスカトリ(=鏡)」「ポカ(=煙吐く)」ですからね?
「テスカ」「トリポカ」じゃありませんよ。
間違えないようにしてあげて下さい。
まぁ、てっちゃんは有名なんで、
今回はウィツィロポチトリを。
ウィツィロポチトリ(Huitzilopochtli)は、
アステカの太陽神であり軍神です。
「左側のハチドリ」って意味のお名前です。
ウィツィロ…ええい、⾧い名前だな!
ウィさんのお母様であらせられるコアトリクエ
(大地と金星の女神:名前の意味は『蛇のスカートを履く者』)さんが、
コアテペック山(coatl+tepetl 要するに蛇の山)で
羽毛の珠を拾った時に、ウィさんを身ごもられたと
言われています。
ところが、コアトリクエ女神の懐妊が面白くなかった(控え目な表現)
コヨルシャウキ嬢(コアトリクエの娘:月の女神)と、
彼女の400 人の兄弟たちは、こともあろうか身重のお母さんを殺そうと
コアテペック山に押し寄せたのです。
ひどい話ですね!
※ここで言う「400」とは日本でいうところの
「八百万(やおろず)」と同じで、「数えるには
多すぎるくらいたくさんの」という意味です。
さぁそんなこんなでウィツィロポチトリ誕生です!
お母さんを護るため、完全武装でお母さんの子宮から
飛び出したウィさんは、顔に戦化粧を施し、左足に
羽を飾って、姉と兄弟たちに戦いを挑みました。
そして最終的に彼は兄弟たちを打ち負かし、
コヨルシャウキ嬢の首を斬り落としました。
やったれやったれ、えらいぞウィちゃん!ヾ(´▽`)ノ
生まれたてのくせにお母さんを見事護った
ウィツィロポチトリは、「戦いの化身」と
呼ばれるようになりました。彼は戦いの神、
戦士の魂を司る者となったのです。
そうそう。
彼の武器はシウコアトル(=トルコ石に変化する蛇)と呼ばれる炎の蛇です。
ウィツィロポチトリの画像を見ると、
彼が緑青色の蛇の怪物をむんずと掴んで掲げている図があると思いますが、
彼はその蛇でコヨルシャウキ姉ちゃんの首を斬り落としたんですって。
なんで蛇がそんなに切れ味いいのかはあたしにも分かりませんが、
シウコアトルはアステカの火の神様シウテクトリ(=トルコ石の主)
とも関連があるので、アステカ神話を学ぶ際には覚えておいて損は無いですよ!
ウィツィロポチトリの有名なエピソードを
もうひとつご紹介しましょう。
昔々、どこに都を築こうかと悩んでいたアステカの民に、
ウィさんの神託が下りました。
「蛇を咥えた鷲がサボテンにとまっている場所に都を築きなさい」
というものでした。
そんな場所はどこじゃいなと真面目に探したアステカの民が見つけた場所は、
なんということでしょう、テスココ湖の中に浮かぶ島だったのです!
ウィさんも、えらくまた拡張性に難がある場所を
指示したもんだとは思いますが、アステカの方々は
啓示の場所が沼沢地
(しょうたくち=水草が生い茂った水深1 メートル未満の水溜まりのこと)
であったことにも怯まず、果敢に干拓に励み、
足場を拡張し続け、そして最終的にそれを束ねて
巨大な都市を建設しました。
その名もテノチティトラン(=石のように硬いサボテン)
当時のメソアメリカ最大の都市だったそうです。
現在はメキシコシティとなっていますね。
※余談ですが、
要するにメキシコの現在の首都メキシコシティは、
テノチティトランの上に作られています。
スペイン人がアステカの民を虐殺した後、湖の水を抜いて、
その上に新たな都市を建設したのですが、
「水草だらけの水溜まりを干拓し排水し続けて乾いた土地を人工的に作り出し
その上に都市を作った」せいで、メキシコシティの地盤は脆弱なんですよ。
毎年50cm のペースで地盤沈下してるらしいですよあそこ。
きっと地の底でテスカトリポカが大笑いしていることでしょうね。
ま、ざっと駆け足でご説明しましたが、
いかがだったでしょう?
機会があればテスカトリポカの話もしてみたいですね。
ただ彼とっても癖が強いので(控え目な表現)、
コラムにまとめるのは結構大変だろうなぁ。
気が進まない(´_`)
それではまた!