No.33: 『幽霊退治:後日談』

幽霊退治も一段落したとこだし、季節は夏の盛りだし、
のんびりしてようかなーと思ってたら、
norsinの旦那から「幽霊退治の後日談を書くべきだ!」と
お叱りを受けてしまいましたよ、奥さん!(-“-)

書くったってなー・・・。 別に特筆すべきこたぁなかったしなー。
あなた方だって毎日の単調な仕事の話をおもしろおかしく日記にするなんてこたぁ
なさらないでしょう?それと同じことなんですけどねぇ。

ま、一応書いておきますかね(・_・)

問題の病院とは、経営不振のため一度閉鎖されたものを
経営陣を入れ替えて再度OPENした、「老人専用施設」の一環の病院でした。
病院の近くにはお年寄りだけがお住まいになっているマンションなどもありました。
「老人ホーム」の常識を覆す、それはそれは豪華な施設でしたよ。

しかし一番あたしを驚かせたのは、病院施設の職員の方々が
非常にあたし達(あたし&イザちゃん)に協力的であったことです。
普通はマユツバモノな世界なわけですから、うっとーしそーな目で
遠巻きにされても珍しくないもんなんですが。

最寄り駅に到着したあたし達を職員の方が車で出迎えて下さり、
問題の病院へ送って下さいました。その病院では、看護婦さんや婦長さん、
男性の職員の方々、そして経営陣である常務さんまでが総出でお待ちになって
いらっしゃいました。車から降りるあたし達を温かく迎えて下さる その歓迎ぶりを見て、
かえってあたしは「うへ。相当のモノがここにいるんだろうな」と思ったものですよ(^_^;)

車から降り、病院内で職員の方々から軽くお話を伺います。
テキトーに聞き流しているあたしと、真剣に聞いているイザちゃん。

話が終わると、さっそくイザちゃんは当該施設の周辺を調べ始めました。
職員の方が一人ついて下さっての周辺地域案内開始です。
熱心に辺りを調べているイザちゃんと、暑くてぼーーっとしているあたし。
対照的なコンビですな!(⌒∇⌒)ノ
(くそう、暑い・・・。おまけに携帯灰皿忘れたじゃないか・・・)と
心の中でぶつぶつ言いながら、イザちゃんと職員の方の後ろを
とぼとぼついていくあたし。その時ふと妙なことに気がつきました。

図解しますので、ご覧下さい(・_・)/

老人ホームと病院施設は、通路で繋がっています。
老人ホームのほうが高台にあり、病院はいわば坂の底にあると思って下さいね。
老人ホームの前には梨の果樹園が設置されておりました。
なかなか見事な果樹園です。小さな梨の実がすでにたわわに実り始めておりました。
手入れも行き届き、濃い緑が生い茂っていました。

・・・しかし。
果樹園ど真ん中の梨の樹、つまり1本だけなんですが、
その樹の根元が緑に覆われておりません。
他の樹木の根元は全て緑色の雑草が生い茂っているのにも関わらず、
ど真ん中のその樹の根元だけは枯れています。
しかしその樹自体はなんの異常もなく、元気に育っている様子です。

あたし:「見事な梨園ですな」
職員の方:「ええ。ここの地主さんが育てていらっしゃるのです。
とてもおいしいんですよ」
あたし:「ほう。それは秋の収穫が楽しみですな」

果樹園の手入れの行き届き方を見ても、ド素人が作っているわけではない。
ましてや「とてもおいしい」と言えるということは、今年初めて梨を植えたわけでもない。
慣れた玄人が手入れしているはずの果樹園の、ど真ん中に雑草すら生えないとは
一体どういうことなんだ・・・?

その樹だけに肥料をやりすぎたとかならば、雑草はかえって生い茂り
樹は元気を失くすはず。しかし実際は樹とその果実に影響は出ておらず、
地面に生えるはずの雑草だけが枯れている。それも円形に。
その樹を取り囲むように・・・。

(気にいらねぇな)と頭を振りながら足元を見つめると、
「雨水」と書かれたマンホールが老人ホーム側から果樹園の左右を通り
問題の病院施設へと繋がっています。
つまりこの2つの施設は地下でも水路で繋がっていることになるわけです。
(ふぅむ・・・)と坂道を降り、病院前の土手の茂みに到着。
なにかちらちらと気に障るものが感じられます。

あたし:「この土手は・・・」
職員の方:「ここを掘ると動物の骨がごろごろ出るんですよ・・・
動物霊園だったのでしょうか・・・」
あたし:「ぉぃぉぃ。掘るなよ・・・かわいそうじゃないか・・・」
そうこうしているうちにイザちゃんが戻ってまいりました。
(どうしたもんだか・・・)と彼女の目には書いてありました。

老人施設というものは、陰の気が溜まって当たり前の場所です。
ナウなヤングじゃあるまいし、今から10年後、20年後の夢を
語り合う場所ではないからです。 大変申し訳ない表現ではありますが、
そこは「緩慢に、しかし確実にやってくるであろう死」を待つ方々が
住まう場所なのです。
そして陰の気というものは、水のある場所を好むことが多いのです。
それも日当たりの悪いじめじめした水場をね。
巨大な老人ホームから幾本もの水路が坂道を下り地下で病院と繋がっている。
老人ホームで具合の悪くなった方々はこの病院へ運び込まれ、
そして生きてそこをお出になることはあまりない。
つまりこの病院はその老人ホームに住まう方々から見ればいわば「最期の地」。
おまけに病院の横には水はけの悪そうな空き地があり、
病院の正面の土手からは動物の骨がごろごろ。

どないせーっちゅーねん!ヽ(‘―`)/

こうなったら老人ホームのお年寄り全員を表に呼び出し、
皆で軽快にサンバでも踊り狂えば、陰な気も吹っ飛んでいいんじゃないかと
思ったりもしたのですが、この炎天下でお年寄りにそんな負担を掛けては、
かえって死人が増えそうです。幽霊退治に呼ばれて死人を増やしたのでは
シャレになりません!(-“-)

あたし:「・・・流れてきてんなぁ」
イザちゃん:「ですね」
あたし:「しゃーないべ。病院内の奴だけでも派手にぶっとばすかぁ」
イザちゃん:「それでいきますか」
あたし:「とりあえず依頼内容は病院をなんとかしろなんだしさ、
病院内のを喰い尽して、後は護符で新しいのが入り込まないよう
蓋をするしかないべ。」
イザちゃん:「そうですねぇ・・・」

やれやれと肩を落とし病院へ戻ると、職員の方々が総出で出迎えて下さいます。
あたしがふてくされてたんじゃこの人達も不安になるだろうと思い、
気分を入れ替え笑顔で歩み寄ると、受付のすみっこで若い看護婦さんが
うなだれています。 どうやら少し涙ぐんでしまっているようです。

あたし:「どうなさいました?(⌒∇⌒)」
看護婦さん:「やっぱり何かいるんですか・・?」
あたし:「あー・・、んーまぁそう凶悪ではないですし(^_^;)」
看護婦さん:「私、昔首を掴まれたんです・・・」
あたし:「え?」
看護婦さん:「病室を出ようとしたら、後ろから傘の柄のようなもので
首をぐいっと引っ張られて・・・・(ノ_・。)」
あたし:「∑( ̄▽ ̄;)」

慌ててイザちゃんを振り返ると、
すでに彼女は関係者から事情聴取を始めていました。
(いつもながら仕事の早いやつだわぃ)と内心舌を巻くあたしです。

イザちゃんはとても丁寧に優しく話す人なので
最初は緊張していた職員の方々も、次第に身に起こった異常などを
正直に彼女に語り始めます。
鼻で嘲笑うこともなく、おごった態度を取ることもなく、
まるでそれこそ看護婦さんのように、彼女は彼らをいたわりながら
話を聞きだしている様子です。

(相手の立場まで自分が降りていく、あの優しさがあたしに無いんだよなぁ)と
内心反省しながら彼女の仕事ぶりを見守るあたし。
そのうち皆さん口々に、「あれもおかしい、これもおかしい」と
イザちゃんに訴え始めました。
しかし大変申し訳ない表現ですが、そういう「異常」の大半は、
本人の思い込みによるものなのです(・_・)b

ひとつ気になりだしたら「あれもこれも」と気になりだすのが人間の常ですが、
最初のひとつ以外は、たいてい本人の思い込みです。
それを本人に分からせてやるのが大事なことなんですが、
この作業は実にめんどくさくて根気のいる仕事なのです!
とてもあたしでは出来ませんo(><;)(;><)o
しかも病院内は禁煙で。
そしてあたしはチェーン&ヘビースモーカーで。
ますますやる気を失うあたしです(-“-)

ぼーーっとイザちゃんと見ていると
彼女はある職員の方の背後(背中側にまわり)
その人に憑いているものをひっぺがしにかかり始めました。

たまに人間には余計なモノがくっついちゃうことがあります。
あたしの考えでは、それを全く気にしなければ影響を受けることは少ないはずです。
しかしその当事者があたしほど豪気ではなく、 そしてその存在に多少なりとも
気づいてしまっていると、くっついちゃったモノが剥がれにくくなってしまうケースが
あるのです。

イザちゃんはこういうものを「見る」ことも出来ますし、
それをひっぺがすことも出来る人です。
ちなみにあたしはひっぺがすことは出来ません。
以前はるちゃんに余計なモノがくっついていたので、それをひっぺがそうと
イザちゃんと試みたことがあるのですが、なかなか剥がれぬソレに
業を煮やしたあたしは 強引に切り離そうとしてしまいました。
おかげではるちゃんはその後3日間 高熱にうなされる羽目に
なってしまいましたとさ!(-“-)

あたしはイザちゃんのように、丁寧に無理なく、本体に影響が出ないように
心配りをしながら少しずつソレを剥がしてゆくなどという
んな細かい作業は出来ません!(-“-) めんどくさいったらありゃしない!
押してダメならさらに押せぇ!ドアが壊れても気にするな!≧▽≦b
というのがあたしのやり方なので(・_・)b

で、ひっぺがしたモノをイザちゃんはあたしに放って寄こします。
それをあたしが喰うわけです。

ぽいっ (・・ )ノ” ゜ >・) ぱくっ
ぽいぽい (・・ )ノ” ゜ >・) ぱくぱく

実にナイスなコンビではありませんか!(⌒∇⌒)ノ

お二人ほどの方にくっついてるのを喰い終われば
今度は問題の病院内の大掃除です。

イザちゃん:「け、血糖値が下がった・・・甘いものを・・・」
あたし:「くそったれ。ニコチン切れた・・・煙草を・・・」

ある意味満身創痍(?)な二人組がよろよろと病院内をさまよいます。
なにせこれを終わらさんことにゃあ、甘いモノにも煙草にもありつけません。
ますます幽霊に対する怒りがこみ上げてくるというものではありませんか!

あたし:「くそ。なんだって病院内は禁煙なんだよ!」
イザちゃん:「はいはい。文句言ってないでそっちお願いしますね」
あたし:「大体なんでこんな夏の盛りに幽霊退治しなきゃなんねぇんだよ!」
イザちゃん:「はいはい。今度はあっちをお願いしますね」
あたし:「あーくそ!煙草吸いてぇよぉ、いざぁ!>_<。」
イザちゃん:「終わったら山ほどどうぞ。今度はこっちの部屋ですよ」

隅っこから丁寧に祓ってゆくイザちゃん。
ニコチンが切れたので頭に来て、部屋のど真ん中で
派手に幽霊を喰い散らかすあたし。
あたしが散らかすモノを掃き集めて片付けてゆくイザちゃん。
冷房の切れた部屋で汗だくになりながら
結界を叩きつけて幽霊に喧嘩を売るあたし。
ふっとばされた幽霊を拾い集めては片付けてゆくイザちゃん。

・・・ある意味ナイスなコンビと言えるでしょう!(⌒∇⌒)ノ

病院内で一番問題になった部屋は、 全ての電源を落としても、
一日中マウスをクリックする音が聞こえていたという妙な部屋なのです。
もちろん無人なんですよ?

あたし:「えいくそ。ここ濃いなぁ!」
イザちゃん:「ここが原因ですね」
あたし:「なんだかうるさい部屋だなぁ」
ミシミシ・・・ミシミシ・・・と、空調さえも止まっている部屋なのに
ずーーっと何かが響いているのです。
あたし:「・・・うるせぇぞ!ごるぁぁぁ!(結界 びしっ!)」
ミシ・・・・ぽたぽたぽた・・・
あたし:「あれ?音変わった」
イザちゃん:「少し静かになりましたね」
あたし:「まだうるさいぞ!ごるぁぁぁ!(結界 びしっ!)」
ぽたぽた・・・・・しーん・・・
あたし:「よろしい(・_・)」
しーん・・・・・みしみし・・・・
あたし:「(-“-)!」

こういう話の通じん幽霊には目にモノ見せてやる!と
ニコチン切れの大暴れ状態紫乃女と、それを横目で見ながら
静かにせっせと丁寧に、辺りを清めてゆくイザちゃん。
これでギャラが半々なんだから、紫乃女の相方もラクじゃありませんなー(⌒∇⌒)ノ

そんなこんなで約2時間ほどの大掃除が終了し、
あたし達はねぎらいの言葉とおいしいご飯をご馳走になって帰路につきました。
もちろん途中で綺麗な喫茶店に入り、
煙草と甘いものを堪能したあたし達です(⌒∇⌒)

非常に駆け足でご説明いたしましたが、
幽霊退治とはだいたいこのような作業ですね。
あまり面白いものではないですよ(^_^;)退屈だしつまんないしね。

そうそう。 その問題の部屋の真下の部屋で写真を何枚か撮りました。
イザちゃんが撮ったものは何故か写っていませんでした。
シャッター音したのになぁ。おかしいなぁ。

で、なんか写ってるような気持ちで見ればそんな風に見えんこともない写真を
2枚ほどUPしておきますね。
そんな気持ちで見なければ全然普通の写真ですのでご安心下さいませ。

やっぱ幽霊退治は春先か秋口に限るなぁ(⌒∇⌒)ノ
ほのかに温かい日か涼しい日がいいよね!
夏場の幽霊退治なんて酔狂でいかん!大体あたしゃ暑いのは大嫌いなんだ!

お、イザちゃんから電話だー。なんだろーもしもーし!(⌒∇⌒)
・・・え? また幽霊退治の依頼来たの・・・?

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