No.21: 『その女:イザちゃん』
ふぅ(-“-)
今度の土曜日に、“赤坂に幽霊再び!”イベントに
弟子のイザちゃんと出かけるわけなのですが、
そのせいでひとつ思い出した話がございます。
今回はそのお話をいたしましょう。
前回・・・あれはいつ頃だったかなぁ。
赤坂のとあるビルに幽霊さん大発生!とのSOSを受けて
あたしとイザちゃんが退治に向かったことがございます。
なんと、6F・5F・4Fを幽霊に占拠されてしまっているビルだそうで。
幽霊くらい気にしなきゃあいいのに、気になる人にはなるんでしょうなぁ。
面倒ですがこれも仕事ですので文句も言っていられません。
しかしあたしは神戸生まれの神戸育ち。
赤坂へ来いと言われたってどこにあるんだかさっぱりです。
そんなわけでイザちゃんと待ち合わせをして、先導してもらうことにしていました。
約束の地、護国寺とやらの駅についてイザちゃんを待つあたし。
イザちゃんはなかなか来ません。
(むぅ。場所を間違ったのだろうか)と不安になるあたしの携帯が鳴り響き、
「財布を忘れたので出直しますからもうちょっとお待ちを」という
イザちゃんからの連絡がありました。
脱力しながら近くの喫茶店で煙草を吸っているあたしの前に
やっとイザちゃんが現れました。
イザちゃん:「お、お待たせしました師匠!すみません!」
あたし:「・・・いや。別にかまわんよ。で、問題のビルに案内してくれんかね。」
イザちゃん:「はい!ではまずこちらへ!」
“まず”という単語にひっかかりを覚えながらも、
あたしはイザちゃんについて行きました。
イザちゃんは勝手知ったるという感じで、どんどん進んでゆきます。
・・・到着したのは、一軒の和菓子屋さんでした・・・・・・。
あたし:「・・・イザくん。これは和菓子屋さんではないのかね・・?」
イザちゃん:「その通りです師匠!そしてとても有名なのです!」
あたし:「・・・いや、その、えーと、幽霊のビルはどうなったのかね・・・?」
イザちゃん:「その前にまずここで大福を買いましょう!とてもおいしいんですよ!」
なんで幽霊退治の前に大福を買わねばならんのだ!という
あたしの心の叫びは完全に無視され、あたし達二人はその店の大福を買い求める
人々の列に並ぶことになりました。
やっと順番が回り、イザちゃんはいそいそと大福と豆板という品を購入しました。
あたしもよく分からないので、彼女と同じ品を買いました(後日談:うまかったですよ)。
(そういえばイザちゃんは無類の甘いもの好きであったなぁ。
仕事の前に好物のひとつやふたつ、買い求めてもいたし方あるまい。
まぁこれで気も済んだことであろう・・・)と思いながらイザちゃんを振り返ると
彼女は今買ったばかりの大福をひとつ袋から取り出そうとごそごそしていました。
あたし:「な、なにをしちょるのかね!イザくん!∑( ̄▽ ̄;)」
イザちゃん:「いえ、せっかくですから今ひとつ食べようと思いまして」
あたし:「今食うのかね!?∑( ̄▽ ̄;)」
イザちゃん:「はい。そのベンチにでも座って。師匠もおひとついかがですか?」
あたし:「・・・い、いや、あたしは遠慮しておこう・・・( ̄▽ ̄;)」
では、失礼して、とか言いながら
イザちゃんは横にあったベンチに腰掛け、うれしそうに大福を頬張り始めました。
煙草ポイ捨て禁止条例のある東京では、道端で煙草を吸うわけにもいかず、
あたしは手持ち無沙汰に彼女を観察していました。
(ホントにおいしそうに食べる人だなぁ・・・あーあ、ほっぺたに白い粉つけたよ)
どうせそのうちお約束のように喉に大福を詰まらせるだろうと思いつつ
自販機で買い求めたお茶のボトルを差し出すあたしと
うれしそうにそれを受け取るイザちゃん。
どう見てもこれから幽霊退治に向かう二人の正しい姿ではありません!
普通は、今から大量幽霊3フロアー分と戦うわけですから
それなりの緊張感があってもいいはずです。
しかもあたしはともかく、イザちゃんは下見の段階でどれほどの幽霊が
そこに渦巻いているかをしっかり確認してきているはずなのです。
なのになんでこんなに平和に大福をかじっているのでしょう!
これでは縁側でお茶をすすってるじいさんばあさんとなんら変わりがありませんよ!
あたしが自問自答で苦しんでいる間に、イザちゃんは無事大福を食べ終え、
「お待たせしました。さぁ師匠まいりましょう!」と
意気揚々と立ち上がり、歩き出しました・・・。
ある意味あたしの弟子なんか、この神経じゃないとやってられないんでしょうなぁ。
今度の土曜日もやっぱりあの店に立ち寄ることになるのかねぇ。
まぁそれも良いかもしれないなぁ。なんせ行列が出来るほどの和菓子屋だしね!
皆さんも幽霊退治の前には大福を食されてはいかがですかな?
きっと度胸も据わると思いますぜ!≧▽≦b