No.18: 『「漢」と書いて“男”と読む』

無趣味を地で行くような紫乃女ですが、
実はMMORPG(Massively Multiplayer Online Role Playing Game)、
つまり大勢の人がゲームサーバーに接続して、
その世界で同時に遊ぶことの出来るゲームが大好きです。

別にそこで「オレサマ最強( ̄▽ ̄)b」になりたいわけではないんです。
その世界を訪れる様々な人々を観察しているのが好きですね。
後は逆に自分一人だけになりたい時とかね。
あたしのことを占い師だとも呪術師だとも思わない人達と
気軽な日常会話を楽しみたい時とか。
気分転換に最高ですよ(⌒∇⌒)ノ

昔はエターナルカオス(旧Laghaim)というゲームによく遊びに行っていました。
そのゲームでは、あたしはあるギルドに属していましたが、
そのギルメン(ギルドメンバーの略)が良い意味でも悪い意味でも粒ぞろい!
あんな面白い連中はちょっといない!良くも悪くも個性的!
あんまりにも愉快な連中なので、OFF会なんぞもやっちゃいました。
集まったリアルのギルメンもこれまた粒ぞろいで!
いやー、あんな面白い連中にはもう今後会えるかどうか分からないほどですなぁ。

面白いだけでなく、連中は温かな奴らでした。
敵のど真ん中に飛び込んでしまったあたしが悪いのに、
見捨てることなく共に戦って死んでくれるようなメンバーでしたよ。←死ぬなよな!
そうそう。 昔、他ギルドと合同で大戦隊を組んで出撃した時、
あたしがしんがり(最後尾を走る役)を勤めたことがありました。
その当時での難関中の難関と言われた細く長い迷路のようなダンジョンを
皆必死で走り抜けました。
イチイチまともに戦っていては全員死ぬだけなのでね。
そして、しんがりは死んで当然なんです。
他の仲間を無事に送り届けさえすれば。
戦隊から誰もこぼれないようにちゃんと守りさえすれば。
そういう役目なんですよ。

最後尾を走るあたしが、ダンジョン出口直前の最難所に飛び込んだ時、
あたしはどうせ死ぬだろうと思っていました。だって最後の一人のはずなんだしね。

「皆無事に上へ抜けられたかしら。それさえ見届けられればいいや」と
その難所に入ったあたしが見たものは。

敵に囲まれながら、出口の前に仁王立ちしている一人のギルメンでした。

「馬鹿!なんで待ってるのよ!」
「早く上がれ!」
「なんであたしを待ってたのよ!死ぬでしょ!」
「いいから上がれ!早く!」

あたしを待っていたその男の名前は”Konchan”。
普段はヘタなシモネタしか言わないような男です。
頼りになるのかならないのか、いつも判断に苦しむようなヤツでした。

(馬鹿。自分だってもう精一杯だろうに!)

効率だけを考えればあたしを待つことにはなんの意味もありません。
たった一人の未帰還のヤツの為に出口を守っているその間も
自分の武器は磨り減り続け、LIFE POT(生命力回復薬)は減り続けるんです。
万一死んだらシャレにもなりません。
何のためにここまで来たのか分かったもんじゃありません。

それでもあたしを待っていてくれたそいつに、あたしは「漢」を感じました。
口には出さなかったけれど、その無骨な漢の優しさに触れたような気がしました。
もしかしたらリアルのKonchanは背が低いのかも。
そして筋骨隆々な男ではないのかも。
でもきっと心は広くて漢らしいんだろうなと。
きっとそいつの「血」は紅くて熱いのだろうなと。

リアルでは分からない「リアル」が見えるゲームって面白いじゃないですか♪
月日は流れ、去年のゴールデンウィークに、
あたしはUO(ウルティマオンライン)という ゲームをやってみることにしました。
単にそのゲームにネクロマンサー(死霊使い)という職種(?)が
導入されたと聞いたので、呪術師としてやってみたくなっただけです。

慣れない世界は大変です。右も左も分かりません。
そんなあたしの前にある男が現れました。

そいつはあたしの装備している武器防具をボロクソにけなし、
理想の武器防具論を繰り広げました。
そんなの初心者に言ったってわかりゃしないのにねぇ。

なんとなく物知りそうなそいつに、ちょうどいいやとあたしは質問をぶつけ続けました。
そいつは懇切丁寧にクドイほど解説してくれました。

ある日そいつはその世界での難関中の難関と言われるダンジョンへ
あたしを誘いました。
よく考えれば無茶苦茶です。まだ初心者だっつーの!
かばってもらい続け、なんとか死なずに戻れましたが、
あたしにとっては小さな親切大きなお世話状態でした。

あたしはそいつがギルドマスターを務めるギルドへ入っていました。
まだギルドシステムも良く分からないうちに誘われて入ったのです。
ギルメン同士はダメージが適用します。つまり対人戦闘が可能になります。
それをいいことに、そいつはよくあたしを殺しては「弱い弱い」と笑いました。

あたしはブチ切れました。
ナニがかなしゅうてゲームでまで人と戦わねばならぬのか。
昔のゲームのギルメンはあたしを守ってくれるような連中だったのに。
あんたは同じギルメンのあたしを殺すのか。
もう金輪際お前なんかと付き合うもんか!

あたしはそいつのギルドを抜けました。
もう口も聞くもんかと決めていました。

そんなある日久しぶりに我が家(UOでは各自家を建てることが可能)に
帰ったあたしが 玄関先で見たものは。
一輪の真っ赤な薔薇の花と、その花に添えられていた本でした。
その本には「悪かった。今までありがとう。元気でね」とだけ記してありました。
喧嘩なんてものは、どっちかだけが悪いなんてこたぁまずないもんです。
双方に言い分があってしかるべきなんです。
でもその本にはなんの言い訳も記されてはいませんでした。
そして別れた(?)女への最後の贈り物として、真っ赤な薔薇を残す男。
なんの言い訳もせずに薔薇だけ置き去りにするような男。 

あたしはその男を捜しに街へ戻りました。

あたしはその男とよくつるんであちこち行くようになりました。
UOの世界が分かってくるに従って、以前男にボロクソに言われた自分の装備が
ホントにボロクソな品であったことが分かり始めました。
良い品を見極める目が培われてきたのです。
そしてその男になんども地面に叩き伏せられたおかげで戦い方が分かり始めました。
自分の力量もね。
ある日あたしはその男と共にワイバーン(竜の一種)の群れの中で戦いました。
あたしはワイバーンの攻撃を受け、同時に毒を入れられてしまいました。
解毒がうまくいかず苦しむあたしに解毒魔法をかけてくれたのはその男でした。
自分のライフ回復よりもあたしの解毒を優先して。

恩に着せるわけでもなく。ただ無言で。

その男はあたしのために服を縫ってくれるようになりました。
あたしは裁縫の出来るキャラクターを持っていなかったのでね。

この色じゃいや、こっちの形じゃないといや、
こっちの布であんな服がいいの
○○ちゃんが着てたようなスカートが欲しいの、
△△ちゃんみたいなブーツがいいの
服装にこだわるあたしの小うるさい注文にも、
男は文句言うことなく 黙々と服を縫ってくれました。
きっと内心「女ってやつは・・・」とでも思ってたんでしょうね♪

普段はヘタなシモネタと寒いジョークしか言わないような男でした。
しかし再度難関ダンジョンに挑んだあたしのペット(竜)が
ダンジョン内で死んでしまった時も、ペットを回収するために
再度ダンジョンへ潜ってくれたのもその男でした。
(ペットは死体を回収すると蘇生可能です)

「今まで大事にしてきた子なんだろ?見捨てないで再トライしようぜ」と言いながら。
自分の竜じゃないのにねぇ♪

その男は普段は頼りない男でしたが、
一度「友」になった者が苦境に陥った時は、必ず駆けつけようとする男でした。

ゲーム内ストーカーに悩む女の子を最後まで守ろうとしたのも彼でした。

仲間が裏切ったんじゃないかと騒ぎになった時も
「あいつはそんなヤツじゃない」と、最後までかばい続けたのも彼でした。

そしてよくよく話してみると、
その男はなかなかに頭の良い男であることが分かり始めました。
深い知性と知識量、そして受け売りではない自分の考えを持つ男。
あたしのマニアックな話についてこれる人間も、
あたしの急激な話題展開についてこれる人間も久しぶりでした。
そして舌を巻く観察眼。

なるほどこれには気づかなかった、そういう可能性もあるかと
彼と話していてあたしは何度もうなったものですよ。
あたしと「死海文書」や「預言書」の話を五分五分で出来る人間なんて
久しぶりでした。 英語がそう得意ではないはずの彼が
どうしてここまであたしと話が出来るのだ、 こりゃまずい、こっちが負けそうだと、
あたしは何度も焦りましたよ♪

そして彼は自分より弱い生き物には優しい男でした。
いたずらに生き物をいじめ命を奪う行為を彼は非常に嫌悪し、
命を奪われた生き物達を哀れむ優しさを持っていました。

当たり前の優しさを。そして最近人からあまり感じられなくなった繊細な感情を。
持っていて当たり前のモノを当たり前のようにちゃんと持っている男でした。

きっとあなたの身体には、当たり前のように赤い血が流れているんでしょうね。
当たり前のように紅くて熱い漢の血が。
無骨で口ベタで、シモネタが好きで。おまけに口が悪くて♪
でもここぞって時には譲らない、一本スジの通った骨のある漢。

・・・そうそう。 言い忘れておりましたが、その漢の名は”norsin”。
ウルティマオンライン Sakuraシャード ギルドCrimson Lakeのギルマスです。

いつかあなたがUOをやってみようなんて気まぐれを起こされた時には
迷わずSakuraへおいでませ。
熱くて優しくて、ちょっと変態チックな漢があなたを迎えてくれますよ!≧▽≦b

(旦那、あたしはRusiじゃなくてLucy・・・) 

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